前回の記事で、易講座の受講レポを書きましたが、
受講前に(そういえば、易が出てくる小説があった・・・)と思い出し、
本棚から引っ張り出して読み返しました。
それが池澤夏樹著『真昼のプリニウス』。

真昼のプリニウス (中公文庫)
池澤 夏樹
中央公論社
1993-10


主人公は若き女性火山学者。
弟の友人である広告代理店の門田に、
電話で「無意味な短い物語」を聴かせるサービス「シェヘラザード」のアイデアを打診され、
「火山と地震と地球の歴史についての物語」の提供を依頼される。
「物語」を考えながらも、大学の授業や研究、浅間山の調査、
友人の子供との交流、恋人からの手紙に心動かされたりと忙しい日々の中、
門田は次なる電話サービスのアイデアとして「占い」を持ち出してきて・・・。


易はストーリーの起承転結の「転」としてほんとちょっと出てくる程度ですが、
易講座を受けた後に改めて読んでみると、
作者がちゃんと調べて、理解してから書いたんだろうな、と思います。

人の悩みと思い詰めがないところに易はない。
しかし、その一方で、筮竹というものはなかなかおもしろいものでな。軽く問えば軽く答える。そういうこともできるのだ。
筮竹は絶対でも解釈には易を立てた者の性格が出る
卦を疑うのはいい。それは易に頼りつつ頼り切れない人の弱みだ。しかし問いなおしてはいかん

などという文章に、いちいち(ふんふん!)とうなずいてしまう
(ちょこっと易の入り口を解説してもらっただけなのに・・・・苦笑)。

六十四の卦に対して、あるいはその之卦変爻まで含めて三百八十四でもいいし、
というくだりなど、ずっと意味がよく分からないまま読んでいましたが、
講座を受けた今は分かる・・・!(よろこび)

改めて読んでみて、これは「双子-射手」の物語かも、と思いました。
学者、大学、研究というアカデミックな分野の射手。
タイトルにもなっている「プリニウス」は古代ギリシャの博物学者で、
これまたアカデミックな射手要素。
門田の「広告代理店」という職業は双子っぽい。
終盤の章のサブタイトルに「二人のお喋り男」というフレーズがあって、
なんとなく双子のイメージ。
「物語を饒舌につむぐ」というのも双子の領域かしら?

物語や理論に飽いた主人公は行動し、体現することで事象に向き合おうとするのですが、
これは牡羊座的な行動力かな。
小説という「言葉を使った物語」の領域で、
「物語にとらわれるな、行動して自ら感じろ」とはっぱをかけてるのだから、
『書を捨てよ、街へ出よう』じゃないけど、
実はかなり冒険的というか挑戦的な作品なんだ!と今さら思いました・・・。

易以外にも、主人公の専門分野の火山や地震関係の話が多く、興味深いです。
1989年刊行の作品なので、阪神大震災や東日本大震災の起こるずっと前ですし、
携帯電話もインターネットもない。
列車の時刻を調べるのに、本屋で時刻表買ってますし、
門田のやろうとしてる電話サービスは、
今だったら携帯メールとかスマホアプリで配信になるのかな、と思ったりしますが、
淡々とした筆致のせいか、そういう描写にもあまり古臭さは感じられず、
改めて読んでも不変性のない面白さ、がありました。

(この歳になってみると、主人公があまりに理想的な女性すぎる、というか、女性の母性にちょっと夢見てないか・・・?とも思いましたが・苦笑)